第3話 愛する人の正体

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第3話 愛する人の正体

「ああ……」 将拓は、口に酒を含むと、一気に裂けた傷へと吹きかけた。 「うっっ!」 「信志様!」 飛び上がる程の痛みを、必死に堪える信志を見て、黄杏は、思わず信志を抱き寄せた。 「黄杏。そのまま抱いていろよ。もう一度だ。」 するとまた酒を口に含み、傷に吹き掛ける。 信志の手が、強い力で黄杏の腕に、しがみつく。 痛すぎて、赤く跡が付くくらいだ。 「よし。黄杏、その黒い布をこちらへ。」 「何が入っているのですか?」 将拓は、黒い布を広げると、一番細い針に一番細い糸を通した。 「傷口を縫うんだ。いいですね、信志様。」 息を切らしている信志は、頷くのが精一杯だ。 「黄杏、信志様の口の中に、厚い布をくわえて貰え。」 「えっ!」 「麻酔無しで縫うんだ。間違えて、自分の舌を噛んでしまわぬようにな。」 黄杏は信志の首元を、自分の腕で覆った。 「早くしてくれ。」
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