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翌日。
学校へ行ったら案の定、クラスメイトYは教室から孤立していた。
可哀想に。
新学期早々、酷い目に合うもんだ。
きっかけは自分だということには勿論気付いていたが、何も知らないふりをした。
だって、面倒臭いし。関わるの。
いじめるのが好きな奴がいじめてたらいい。
自分に向けられている視線に気がついたらしいクラスメイトYが、女子達に話しかける。
「あの、私、何かした、かな?」
「今日髪全然まとまんなくて、最悪ーー」
勿論のこと、無視だった。
クラスメイトFはキャハハハと女子特有の甲高い声で笑う。
教室中が異様な空気で満たされているのが分かった。
そして各々が、その非現実的な雰囲気を楽しんでいた。
善だとか悪だとか、そんなものは関係なかった。
少なくともこの場だけでは、“数”だけが“善”であったから。
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すぐに終わると思っていたいじめは、一週間経っても納まる気配はなく、目に見えてエスカレートしていった。
時折、Yに気を利かせた晃太が話しかけていたが、他のクラスメイトが途中でYから晃太を引き剥がしておしまいだった。
そういえば晃太の他にも、誰かがしつこくYに話し掛けてた気がする。
そう、確か、クラスメイトH。円城敏幸。
そいつもまた、クラスカースト最下位に位置する人間だった。
それがなお一層、Yへのいじめを加速させた。
付き合ってんじゃねーの。あの二人。
誰かが言った。
そうなのか、と心の中で嘲るのと同時に、
そんな訳がない。と警報を鳴らす自分がいた。
なんにせよ俺はその光景を、蚊帳の外にいるような気持ちでただただ眺めていた。
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