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春樹は今、サキコに対して今何を感じているのかはわからない。ただ、サキコの姿がなくなってからも、この店にサキコの影を探しにやってきている。
モモコができあがったオムライスをカウンターから客席へと運んでいった。
「おいしくなーれ」という言葉が終わったとたん、黄色いキャンパスにケチャップのハート柄が綺麗に描かれた。
「モモコちゃん。そろそろ行くわ」
春樹はそう言って代金を支払うと、店を出て行った。
時刻は正午を回っている。大阪の街は昼休み中のサラリーマンやOLであふれている。
――自分はいったい何をしているんだろう。ホントに人間のクズだな。
自らの不文律を破れず、不戦敗の後もまだ負けをひきずり続ける自分。社会の中からつまはじきになっている自分に、春樹は心の中でそう言い放つ。そしてそんな街から逃れるように、春樹はネオンが光る騒音の中へと呑まれていった。
春樹は7年前からパチンコ店へとよく通っている。打つのはアニメとのタイアップ機種。最近打つのは女子高の軽音部を舞台にした大ヒットアニメとタイアップした『バンドラヴ』である。春樹は『バンドラヴ』の大の愛好者で、特に軽音部のキーボード担当、平沢琴音の大ファンだった。フィギュア、CD、抱き枕など、グッズというグッズはすべてそろえた。ただ、今家にあるのは数枚のDVDだけである。
――今日は全く出ないな……
1時間ほどで財布の中にあった野口英世五枚を喪失すると、春樹はとぼとぼと店を出た。春樹はここ最近、5円スロットしか打っていない。比較的穏やかなレートだが、それでも時によっては5000円くらいはあっという間になくなるものだ。事情があるので本当なら5円スロットで金を増やして4倍のレートである20円のスロットを打ちたいところだが、なかなかうまくいかないものだ。
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