終わらない観覧車はなく

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「お腹空いてない?そろそろお昼だけど、何処か寄ろうか」  そう言うと、美月は自慢げにパンフレットを鞄から取り出し、それを指差すと此処でお昼にしたいという事だと理解し、コーヒーカップとメリーゴーランドを横目に通り過ぎる、乗り物の裏側に隠れる様にしてフードコートが現れた。 「此処食事処が判りにくいって有名だったから先に調べて正解だったよ。まさかお化け屋敷の真裏で隠れてるなんてね」 「確かに、初めてだと気づきにくいな。何でこんな所に作ったんだろうな」  夏場の集客が多いので日陰になり涼しいからじゃないかな。等と勝手に想像しても見たがやはり答えなど無いまま、疎らに空いた席の一番奥に二人して陣取った。清士郎は何を食べるか考える前に飲み物だけ用意する。  結局、各々好きな物を適当に食べる事になった。清士郎は焼きそばを頼み、美月はホットドックを頼んだ。午前中乗った乗り物の話をしながらゆっくりとした昼食を二人で摂った。午後になっても同じ様に順番に乗ると思いきやそうでも無かった。  アトラクション系は乗り尽くした事も有り、子ども向けのアトラクションをどれから乗るかを考えながら、人気の少ない所から制覇していった。夢中になる時間はあっという間に終わりを告げる。 「もう夕方かぁ、やっぱり最後はあれよね」  そう言い美月は観覧車を指差した。今日これが最後になるであろう乗り物を前にして、清士郎は胸に引っかかっていた事を打ち明けるか否かを考えていた。
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