終わらない観覧車はなく

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「でね、、、、、、、、だから結局私はそう言う者に成りたかったんだと思う」  美月の最後の一言で、ただの考えは確信へと変わった。そして、それと同時に美月はなりたかったと言い、自分自身でそう言った存在になれなかった事を理解していた。  暫く呆然と目を合わせていたが、美月は暫くすると景色を見ながらたった一言”清士郎君は?”と声をかけて来た。同じように外を眺めながらどう答えるか考えた。 ”誰かを助けるような人になりたい”  彼女の答えはそうなのであろう。しかし清士郎はきっとそう言う風には思えない。そして未来など今まで考えもしなかった。今をどうやり過ごすか、今をどう上手く回すかで手一杯の清士郎にとっては残酷な話でしかなかった。 「そうだね、美月は諦めなければいいと思う。俺はきっとこのまま、、、、、、、、今はまだ言えないかな」  茶を濁したのではない。清士郎にはすでに決めていた事が有った。それを口にしてしまえば必ず反対される。いや反対されるはずだと言う何時もの根拠のない何かの決めつけなのかも知れない。  美月には声援を送った。それが清士郎の出来る精一杯であると思ったからである。そして自身の何時もの勝手な共感を理解していた清士郎は、出てしまった答えに対してただ歪な笑顔を隠す事しか出来なかった。
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