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「夢?あぁ楽してできるだけ働きたくないね。進路希望調査にもそう書いたしアンパンマニア」
腐った様な目をした彼はただ病室に来て愚痴を溢していた。揺れるカーテンを見ながら彼に視線を戻すとこめかみに皺を寄せながら自分の持てる全ての負の感情を込めて伝える事にした。
「つっっっまんない男ね!アンタみたいな男に助けられたなんて一生の不覚だわ!退院したらすぐもう一回飛んでやるんだから!」
あの日の夜。冬の冷え切った海に飛び込んだ私は一命を取り留めていた。何でも騒ぎを聞きつけ飛び込んで助けてくれたのが彼こと”清士郎”である。ちなみにクラスこそ違うが同じ学校の同じ学年だったりする。
「あと、アンパンマニアって言うのは止めてよね!アタシには”美月”って名前が有るんだから!」
「皮肉にもほどがあるだろ。まぁいいか有名人で皆そう呼んでたんだから仕方ねぇだろうが」
皆って誰だよ。こんな男に命を救われたかと思うと私の運の無さを呪いたくなる。と言うかこの無気力極まりない男が本当に私の為に海に飛び込んだとは嘘くさくてかなわない。
清士郎はバイトの帰り、偶然帰り道で私を助けた。それで終わる筈だったのだが、どうやらこの男は学校に上手い事言われ私の監視役に任命されたそうだ。
「まぁいいか。どうせ後一週間も居ないんだろうし、俺もようやく解放されるアンパンマニアから」
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