灰色の夢

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 二度目のフライトは大吊り橋の上からと決めていた。夜風を受けながら時折通る車のライトを避ける様にして大吊り橋の端を歩く。他人が歩けると言っても人一人と折れる程である。  強風が吹くだけで振動が起きゆらゆらと揺れるのを感じられるような場所であった。初めて来た場所であったが思った以上に明るい割に、夜景のネオンははっきりと見えるデートスポットにする事に納得が出来るような所である。 「夏だったらきっと誰か居たかも。綺麗、、、、、、、、、、、」  そう呟いた美月は大吊り橋の真ん中で夜景を暫く眺めていた。あの日、逃げるように清士郎をふり切ったがやる事に変わりなど無かった。飛べなければまた飛べばいい、失敗は成功の父である。救って貰った命を投げ出そうとする等と誰もきっと思わない。  ネガティブなのにポジティブそんな変わった言葉が浮かび、自分自身に対してクスリと笑いがひとりでに零れた。次の失敗は無い、それほどの高さであり、下を覗けば真黒な海がまるで全てを飲み込むかのように存在感を醸し出していた。 「、、、、、、、、きっと今夜でどんな事も」  一度目の時の様に、今この場所には呼んで居ない観客はいない。手すりに手をかけあの時の様に足をかけたその時だった。一台のバイクがクラクションを鳴らしながらスピードを上げて近づいてきた。
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