灰色の夢

7/18
前へ
/56ページ
次へ
ーーーーーーーーそれはたった数年前の話であった。  授業中、突然慌ただしく誰かが駈け込んで来た。教室中が固まった中、呼ばれたのは私だった。教師の慌ただしさから何が有ったのかは大まか察しがついた。母子家庭だった私の母に何かあったのだと。 「とにかく早く病院に!国語の先生に車頼んだから」  子どもだって馬鹿では無い。病院と聞けば事故か何かである事が解ったが、私は泣く事も忘れて駆け足で先生の煙草臭い車に乗り込んだ。病院は近かったのを憶えている、倒れた母も近場で仕事をしていた為である。  大きな病院だった為、何処をどう走ったのか解らなかったが先生は大きな扉の前で待つ様に私に言うと何処かに連絡を取りながら消えてしまった。赤く光る手術中と書かれたそれの意味は解らないままそこで待った。 「貴方が美月ちゃんね、コレ良かったら食べてね学校の人行っちゃったね。疲れたらこの椅子で横になってもいいのよ」  そう言い、隣りに看護師さんがやって来るとパンとジュースを手渡し、暫く話をしてくれた。今この中で母は必死に頑張って生きようとしているのだと、そして必ず先生が治してくれると言い、時折様子を見に来ては話をしに来てくれた。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加