灰色の夢

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 始めこそ警戒し、この夫婦は自分を本当に助けてくれる人間なのだろうかと疑りながら言葉を交わした。しかし男性は、自分の知らなかった母の思い出や生い立ちを話してくれた。 「とにかく優しかった。俺にとっては今でも良い姉だ」  小さかった頃、母は面倒見の良い性格で弟である目の前の男性に、よく勉強や遊びを教えて一緒に遊んでくれた事や、母が秀才で父と母に大切に育てられた事を話してくれた。家族全員が中が良く何処にでもある幸せな家族だった事を。  しかし、その幸福も母の思春期と共に一変する事となった。母がまだ学生だった時に同じ学校の同級生と恋に落ちた。そこまでは何処にでもある話であったが、学校を卒業する前に母と同級生は結婚したいと申し出たのだった。  しかし、それを母の両親が許す訳もなく、せめて学校を卒業してからでも遅くはないだろうと説き伏せていたが、二人の付き合い自体を同級生の両親が快く思わず別れる様に何度も言われていたらしい。  結果、二人は現実と言う壁から逃げ出す駆け落ちと言う名の選択肢を選んだ。やがて二人はある日突然学校から姿を消し、それから祖父母の家に戻る事は無かったと言う。勿論、母の両親も怒ったが父の両親も激怒した。  しかし二人の生活も長くは続かなかった。私をお腹に授かった頃、父は籍を入れる約束をしたまま貧乏に耐えきれず、逃げ出す様に親に泣いて頼み実家に帰った。しかし母は、お腹に子どもが居た事も有り帰るべき場所も無く一人で産み育てる決意をしたのだと教えてくれた。
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