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今までの住処を出ると、鞄一つで母の弟の家に転がり込んだ。特別セキュリティが有るような場所でも無く、近場には銭湯等があるむしろ下町感の有る外観であった。高級そうで落ち着きのある身なりの二人だった為、もっとお洒落な所に住んで居ると思っていた。
しかし室内は二人で住んで居ると言うだけあり、家の小物まで凝ったものが多く、まるでモデルハウスの様な清潔感のある、美月にとっては少し物怖じしそうな室内であった。
「今日からお世話になります」
かしこまった挨拶に二人して急に笑った。笑いながら”此方こそ”と二人は言い、母の弟である叔父は胡坐をかき煙草に火をつけると”コーヒー”とだけ言い奥さんは気にした風もなく大きめのマグカップいっぱいにブラックコーヒーを用意した。
「そうそう、そっちの部屋掃除しておいたから好きに使って。元は物置だったから少し狭いが大丈夫だろう」
「私の部屋まであるんですか、何から何までありがとう御座います」
そう言い、初めて自分の部屋を持った事への喜びが込み上げた。指差した先の戸を少しだけ開けた。机と布団が有るだけの部屋だったがそこに荷物を置く。机と布団が敷けるだけの狭さはむしろ秘密基地を思わせた。
「あれ、この机って」
元置いてあったとはいえ、机を本当に自分が好きに使っていいのかと聞くと”俺のお下がりだがな”と言い、今は全てノートパソコン内で仕事は片付く様にあった為、あまり使わなくなったので構わないと言われすぐさま自分の持って来た荷物(えほん)を美月は並べたのだった。
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