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長いようで短い三年間だった。夫婦との仲はずっと良好で些細な喧嘩もあったが決して壊れるような関係では無いと思っていた。そして、私自身も我が子の様に可愛がってくれていた事に安堵しきっていた。
ーーーーーーーー穏やかな日々の終わりは、喜びの言葉で始まった。
「聞いて美月ちゃん!!実は私達に子どもが出来たの」
「おめでとうございます!念願のお子さんですもんね」
叔父夫婦には子どもが居なかった。正確には居なかったのではなく出来なかった。念願かなって不妊治療を続けた夫婦の努力の甲斐もありようやく子どもが授かった。
私は共に喜び心から生まれて来る事に祝福したのだった。家族が増える不思議さと、何時もよりもずっと会話の弾む家族での会話。名前や生まれてくる子どもの用意で忙しい日々が始まった。
その頃からであった。私の心の中には真っ黒な何かが住んで居て、それが少しずつ私の心を蝕んでいくのを。そして、それはずっと無自覚であった。目の前で幸せそうにしている夫婦を見るのが辛かった。
何故ならば喜びと反比例するように、再び自分はあくまで姪であり居候であり遠い親戚の様な者でしかないと考え始めた。思考が傾くと、気が付けば自分の心は真っ黒であった。血が繋がっているとはいえ、自分が他人なのだと考えるようになった。
そして何時かは、この家を去る準備をしなければいけないと、思い始めたのもこの頃からである。今にして思えば馬鹿げた話の様にも思えたが、家族を失う悲しみを二度も味わいたくないという、自分の弱い心からそうなってしまったのかも知れない。
やがて生まれたのが雄太君だった。
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