灰色の夢

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 これが私の人生であり、私を培った基礎となる思い出である。私は雄太君に自分と言う同居人をこれからどう説明したらいいのかや、叔父夫婦に自分達の子どもが出来たので、子どもの変わりはもう要らないなど様々な葛藤と思考が駆け巡っていた。 ーーーーーーーーしかし、どれも本当の自分の心を隠すものでしかなかった。  本当はただ一つの事に対しての嫉妬でしかない。叔父夫婦の愛情が私でなく雄太君と言う実の子どもに注がれ、私が阻害されてしまうのではないのかと言う恐怖と嫉妬。  それに気づいてしまった私の心は黒く染まり、やがて深く深く自分を心の奥へ押しやって心を閉ざす様にし、叔父夫婦に言葉や態度で距離を取る様になってしまった。私は知らなかったのだ、自分の中にまだこんな独占欲の様な物が有るなんて信じたくも無かった。  自分を嫌いになった。そしてこんな気持ちでは此処に居られないとも思い。この家族から逃げる他の選択肢をその時の私は何も思いつかなかった。  叔父夫婦は受験や勉強の為、雄太君の育児の邪魔も出来ないと色々な言い訳をした。そうやって家から逃げ一人暮らしと言う物を手に入れたが、条件も勿論あった。叔父の勤めている学校で教育を受けると言う約束である。  始めこそ色々言われたが、その条件を受けるなら許そうと最後は叔父の一言により一人暮らしの許可は程なく下りた。奥さんはその頃は育児に入っていた為、反対こそしてくれていたが最後は叔父の言う通りにすると渋々了承する運びとなった。  感謝してもしきれない程の救いを与えてくれた夫婦に対して、私はその時は逃げる事しか出来なかった。そうする事が自分と叔父夫婦にとっての最善だと思っていた。   しかし、学校で少しずつ言葉を交わし少しずつ成長してきた中で、自分の選択は幼さゆえの間違いであり、一人で決めなければいけないと言う唯の決めつけであった事を理解し始めていた時期であった。 ーーーーーーーそれは起こった。
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