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勿論、あだ名はそこから来ているのであったが、本人曰く”私は別にヒーローになりたいんじゃないの”そう言い、自分をあだ名で茶化される事を酷く嫌っていた。
「今日のは中々だったな。この間の泣けるやつに比べればやっぱり童話だけど」
絵本と言うのは中々侮れない。子どもが読めばどれもただの絵本であるが、大人が読めばその真の意味や伝えたい意思をダイレクトに受け取れるため、大人こそ読めば良いような作品も沢山あった。
始めこそ嫌々であったが、話を聞かされるうちに、どういう訳か自分もそれが嫌いでは無くなり、それ所か少し好きになっている自分がそこに居た。子どもが読むものこそ洗練されているのかも知れないと最近は思うようになった程である。
「アレは特別。まぁ、もう来てくれないと思ったし。良い絵本は例え一冊だって知っていて損はないと思うから」
少し淋しそうにそう言うと、本を閉じ元の位置に戻す。まるで小さな子どもが入院している様な病室の一角にい居る女子高生は紛れもなく一度はこの世界から居なくなろうとした。しかしこうして生きて今こう話して居られるのは偶然でしかない。
「じゃあな。早く記憶が戻ると良いな。二・三日の分だったとしても」
そう清士郎は”反対の気持ち”を口にして病室を出た。
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