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それから暫くは、病室に行ったり行かなかったりの日々が続いた。用事や届け物が無い限り行くのは不自然である事と、やはり清士郎自身もそこまで思い入れは無かった為である。
「はぁ、まぁいいか。別に嫌いって訳でもないし」
そう呟くと、何時もの様にナースセンターを超えると一番奥の病室にやって来た。その間、幾つもの普段は聞く事の無い機械音を聞く。心電図の音やナースコールの音や誰かの呻き声。
そこは紛れもなく病院でありその奥に彼女が居る。今日も教師に言われた事を思い出していた。それは何度も聞いた言葉である”美月の所に出来るだけ行ってやってくれ”そう頼まれ今自分は此処に居る。
大きく深呼吸をし、扉を横にスライドさせるとその奥でこの間と同じような恰好で美月は外を見ていた。
「よ!暇人。相変わらず童話ばっかり読んでんだろう?今日も来てやったぞ」
「あぁ、何だ清士郎君か。前から言おうと思ってたけど童話じゃなくて絵本だよ」
今日は調子が悪そうである。時々ではあるがそう言う日が何度か有った。本人曰く元々そう言う体質で時々起ったと話して居るが、病院で調べても何も解らないそうだ。彼女の手には絵本が開かれたままで有ったが、今日はチラリとも見る様子はない。
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