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灰色の夢
ーーーーーーーー私の全ては絵本だった。
それ以上もそれ以外も無く、それしか見えない。何時からこうなったのかはもう覚えていない。ただ私の固執はただの執念の様な物である。誰にも何にも感化されはしない。決めた時からそれ以外を見なくて済んだから。
それは私だけの世界。私だけの夢。私だけの希望。
だからこそ私はあの夜に魔女になりたかった。けれど、あんなにも辛い思いをしたのに私は空を飛べなかった。だからもう何もいらないと思ったんだ。でも違った、私は今こうして生き延びて何の夢も叶えられず現実に振り回されている。
夢さえ持たず、それに邁進しない者達の悪意をまた聞かなければならないと思うとウンザリであった。私が笑われるのも私がけなされるのも私が悪口言われるのも本当はどうだっていい事なのだ。
ただ、母にだけはそれを解って欲しかったのに。
あの日、私の母は私の夢を破り捨て私を罵った。それから逃げるように私はかぐや姫を思い月の中に飛び込んだ。あんなにもキラキラと輝く煌めきの中で私も綺麗なままサヨナラの意味を知りたかったのかも知れない。
先生には悪い事をしたけれどもう限界だった。心が溢れて壊れてしまう位なら一度でもあの夜に魔女になりたかった。ただ飛び損ねた私の抜け殻は、今こうして彼の好意に似た何かを崩す事しか出来なかった。
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