弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》09

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弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》09

 パンケーキを頬張り、幸せそうなそうな中年男性の向かへに座り、私はそう言いました。  「よく、解ったね。そうだよ、僕がトリックスターだよ」  私が睨んだ通り、やはりトリックスターだったようで、本人はあっさりと認めました。  「さて、何で僕だと解ったのか――、解答を聞く前に、ちょっと長くなりそうだから、邪魔が入らないようにするね」  そう言って、トリックスターは指をパチンっと鳴らしました。その瞬間、辺りは時間が止まったように静止しました。  そして、もう一度指を鳴らすと、中年男性は身体から紫煙のようなモノを吹き出して、全身が見えなくなりました。  身体を覆っていた紫煙が晴れると、そこには目鼻立ちのきれいに整った青年が姿を現しました。  「いやー、こちの格好の方がしっくりくるからね。とにかく、これで邪魔は入らなくなった。改めて自己紹介をするとしよう。僕はトリックスター。はじめまして、弁天堂美咲ちゃん」  「それよりも、なぜ私にこんなことをしたのですか?」  「うーん……。そうだな、それじゃあ先に、美咲ちゃんの方から教えてよ。何で僕が、トリックスターだと見破ったのか。そしたら教えるよ」     
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