弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》02

1/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ

弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》02

 ピーピーピー。  起床を告げる目覚まし時計の音を止め、私の一日は始まります。昨夜は、大好きな小説家の新刊発売日であったので、ついつい夜更かしをしてしまいました。  ちょうど、五十六ページにしおりが挟んであるので、ここまで読んだのでしょう。帰り次第、続きを読みたいと思います。  私の朝は、顔を洗って歯を磨き、軽くお化粧をして髪を整えます。お化粧は、中学生の時にお母さんに習ったもので、女としてのたしなみ。エチケットとして習ったものが、習慣なっています。  そして朝食。  メニューは、トーストとコーヒーが苦手な私は、ミルクたっぷりのカフェオレ。トーストには、お母さん特製のマーマレードをトーストに余すところなく塗りたくり、一気に頬張る。  その瞬間、甘さの中に柑橘系特有の程よい酸味、時折顔を出す皮の苦味が何とも言えない至福の瞬間ならぬ、至福の瞬間が訪れるのです。  さて、時間もさほどありませんので、さっさと朝食を頂くことにしましょう。  「……あれ? お母さん、マーマレードは?」  「あら? そこの瓶入ってなかつたかしら?」  「ないよー。空だよ」     
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!