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弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》02
ピーピーピー。
起床を告げる目覚まし時計の音を止め、私の一日は始まります。昨夜は、大好きな小説家の新刊発売日であったので、ついつい夜更かしをしてしまいました。
ちょうど、五十六ページにしおりが挟んであるので、ここまで読んだのでしょう。帰り次第、続きを読みたいと思います。
私の朝は、顔を洗って歯を磨き、軽くお化粧をして髪を整えます。お化粧は、中学生の時にお母さんに習ったもので、女としてのたしなみ。エチケットとして習ったものが、習慣なっています。
そして朝食。
メニューは、トーストとコーヒーが苦手な私は、ミルクたっぷりのカフェオレ。トーストには、お母さん特製のマーマレードをトーストに余すところなく塗りたくり、一気に頬張る。
その瞬間、甘さの中に柑橘系特有の程よい酸味、時折顔を出す皮の苦味が何とも言えない至福の瞬間ならぬ、至福の瞬間が訪れるのです。
さて、時間もさほどありませんので、さっさと朝食を頂くことにしましょう。
「……あれ? お母さん、マーマレードは?」
「あら? そこの瓶入ってなかつたかしら?」
「ないよー。空だよ」
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