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ティアラが微笑んで、魔術書を捲った。
「ふたつほど方法があるようです。ですが、術者、被害者の死亡という選択肢はあり得ません。術者のアリオスは亡くなって居るのに術は解けていないのですから。それに姫様を殺すつもりはありません。ですから、必然的にこちらの、術の媒体破壊をすることが大切です。悪魔が来るのはいつか分かりますか?」
「明日だよ」
「明日って、そんな」
「だから僕は藁にもすがる思いでここへ来たんだ」
アストはフィリンを思い出していた。美しい女性だった。一目で焼き付いた黒い眼差しに茶色の髪の毛。きらびやかなドレス。今までに会ったことのない女性だったのだ。
「どうすれば良いのでしょう。悪魔祓いの準備も必要だというのに」
「悪魔を封印する方法はないのか?」
「──それには封印の箱が必要です」
「封印の箱はどこでてにはいる?」
「この国では取り扱われていない箱ですから、調達は難しいかと思います」
「それだと、悪魔に対抗する手だてが無いのと一緒じゃないか」
「箱は隣の国で手には入ります。けれども、馬を飛ばして間に合うかどうか」
ティアラが窓の外を気にした。
小窓から見えるのは闇と少しの月明かりだけであった。
アストは乗馬が得意ではなかった。
深夜の街を馬で突き抜けるなど難しすぎた。
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