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「他に方法は無いのか」
アストはティアラに詰め寄る。
ティアラは目を逸らすと魔術書をなぞる。
魔術書の文字が反応を示した。
アストは光輝く部分に目線を投じる。
「──姫様と逃げろって?」
浮かんだ文字にアストは口の渇きを感じた。
「そうですわ。隣の国に姫様をお連れすれば良いのです」
ティアラが両手を叩いた。
「そんな危険なこと出来るわけがないだろっ」
「悪魔はどのみち姫様を狙って来ます。ですから、悪魔が来る前に悪魔を閉じ込める箱を用意するために隣国へ向かうのです」
「僕は魔術が使えない。悪魔が襲ってきては闘えない」
「私も同行させていただきます」
ティアラが凛とした表情で言い放った。
「危険すぎる」
「私は悪魔を殺すために着いていくだけです」
ティアラは引こうとはしなかった。
「結構、ややこしいことになってるね」
二人の会話に黒髪の男が飄々と割って入った。
「何者ですか」
ティアラが即座に警戒した。
「私の名前はブレンディ・フェレという。込み入った話のようだけれど。私も仲間にいれてはくれないだろうか」
ブレンディと名乗った二十代半ばの男は楽しげに言った。黒い瞳と黒髪が特徴の男であった。
「話をきいていたのですか」
ティアラが聞けばブレンディが笑う。
「この時間に人が居ないと思ったのかい?」
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