1章 銀の鍵

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「それにしたって時間が無さすぎる。ある材料でできるだけ頑丈には作るけれど──失敗するかも知れないわよ」 「それは引き受けてくれるということでいいのかな?」 ブレンディは静かに聞き返した。 メルラは仕方ないからと前置きして、髪の毛を結び直すと椅子から降りる。 「朝までに仕上げるわ。待ってって」 それだけ告げてメルラは扉の向こうへ消えた。 「さて、私たちはどうする?」 ブレンディの問い掛けにアストは悩んだ。 悪魔がいつ攻めてくるか分からない。 フィリンのことが心配だった。 「私は道具ができるまでここに居ります」 ティアラが言った。 「私としてはここの武器を借りて城に行こうかと思っている」 ブレンディとティアラの意見が別れた。 アストは一拍置いてからふたりに答える。 「僕は城に向かうよ。フィリン姫が心配だから」 「わかりました。ではここで一旦別れましょう。悪魔と戦う術が見付かっただけでも相当の進展です」 「成功するかは僕らに掛かってるようだけど、大丈夫かな」 「弱気になってどうするのですか、メルラさんを信じて、今は待つしかありません」 ティアラは毅然と言い切った。 アストはというと不安ばかり募らせていた。
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