1章 銀の鍵

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悪魔は、世界に於いてとても脅威的な存在であった。 魔術師に封印された悪魔の数は数百にも及び、駆除された悪魔の数は計り知れない。 魔術師に宿る魔力は悪魔の力と口伝が残されていることもある。 悪魔という存在は魔術師以上に危険なものだった。 そんな存在から姫様を守るというのだからアストの心境も尋常ではない。 具現屋をブレンディと出たアストは始終、後ろを気にしていた。 「何もいないよ。大丈夫。悪魔はこちらの動きを把握していない。フィリン姫のところへ急ごう」 「ブレンディさんは怖くはないのか?」 「怖いけれども、興味も勝る。ああ、そうそう。呼び捨てで構わないよ。私もアストと呼ぼうと思う」 傍らを歩調を合わせて歩くブレンディが声音を響かせた。 「それならブレンディ──。なぜ悪魔の研究をしているか訊いてもいいか?」 「数年前に文献を読んで興味を持った。初めは半信半疑だったのだけれど、同士を見付けてのめり込んだ。そうしたら悪魔が解き放たれて西国に居ると言うじゃないか。私は悪魔を捕まえて研究材料にしたいのだよ」 ブレンディは残酷なことを平気で言ってのけた。 アストには共感できない領域でブレンディは生きているらしい。 「けれども、ティアラは悪魔を殺すと言っていたよ」 「それはそれで構わない。悪魔は一匹だけでは無いからね」
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