1章 銀の鍵

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「悪魔は何れくらいいるんだ?」 「一万以上いるよ。悪魔の封印で知られているのは数百体に及ぶ。それがほどけてしまっては世界が終わってしまうかも知れないね。私はそれも防ぎたいと思っているのだよ」 「封印って簡単に解けるものなのか?」 「一定の条件があるね」 「一定の条件?」 「封印したときの術者によって違うのでなんとも言えないが、この国のお姫様が開いた箱はお姫様の魔力反応するように仕向けられていた可能性がある」 「なるほど。術者によって条件があるんだな。だけどなぜそんな封印の仕方をしたんだ?」 「昔は敵が多かったから誰とは言えないけれども、相当の恨みを持った魔術師じゃないか。という検討は付いている」 「恨みを買うような国には見えないけれど」 「アストはこの国の歴史をどこまで知っている?」 問われて初めてアストは考えていた。 幼い頃は母と暮らしていた小屋がすべてだった。近くの林からは出たことがない。父親はたまにしか帰ってこなかった上に、ある日突然死んでしまった。この国のことを知ったのは城に引き取られてからであったが、深いところまでは知らないに等しい。 「言われて見れば──そう興味もなかったな」 「そうだろう。この国は平和そうに見えて敵が多い。先代の王が何かと喧嘩を仕掛けていたんだ。だから、姫様に嫌がらせで呪いを架けた可能性があるんだ」 「けれども悪魔を封印したのはもっと前のことだろ?」 「先代の、といっても十代前の話だろうね。そこまで呪いが続いていたとするなら、呪いを架けた魔術師はとんでもない人物だったと予測できる」
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