1章 銀の鍵

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「十代というと軽く百年以上ということかよ」 「もしかしたら血筋で管理しているという可能性もある。早いとこ悪魔を捕まえて小一時間ただしたい」 「だけどなぜ今更(いまさら)」 「今になって動き出したということは、それなりの運命(さだめ)だということだろう」 「そういえばお姫様が言っていたな。僕が何度も夢に出てきたって」 「お姫様がそんなことを?」 「だから僕が悪魔だと勘違いしたんだと」 「そういえば、図書館でも聞いた気がする。悪魔の話に気を取られていてふたりの出会いは訊いてもいなかった」 ブレンディはお気楽なものであった。 「楽しそうだね?」 「好きなことをすることがいけないことかい?」 「悪いとは思わないよ。自由が羨ましいと思うだけさ」 「自由でもない。仕事は荷物運びだ。魔術師だということはうまく隠して生きている」 ブレンディの口振りは軽かった。 ふたりの眼前にクリスタル城は見えてくる。 前門を前にブレンディがいきなり鼠に姿変えた。 アストは危うく叫びそうになることを堪えてブレンディをポケットに突っ込んだ。 門番に適当に事情を説明して、中庭に突き進むと周りを警戒しながらフィリンが居る塔へと向かった。 部屋に入るための銀の鍵は首からぶら下げている。 塔の扉を開いて螺旋階段を駆け上がる。 フィリンが居る部屋の扉をアストは開いて硬直した。 フィリンがどこにもいない。 部屋を間違えたかと飛び出してみたが、間違いではなかった。 「どういうことだよ。まだ約束の日じゃないって言うのに!」
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