1章 銀の鍵

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「悪魔の臭いがするね」 ブレンディがポケットから顔だけ出した。 「臭いがわかるのか?」 「それは分かる。動物になると動物の能力を使えるようになるからね」 「なんてことだ。悪魔に姫様が拐われてしまった」 アストは銀の鍵を握り締める。 背後から誰かが上がってくる気配を感じてアストは背筋を凍らせた。 「ああ、なんてことだ。ユリナに続いてフィリン迄も」 アストを突き飛ばして部屋に踏み込んだ国王が泣き崩れた。 「国王様、気を確かに」 アストはありったけの言葉を掛けた。 「お前は庭師のアストか?」 国王は涙を浮かべてアストを見上げた。 アストは今までのことを国王に話す。 すると国王はアストの腕を掴んで言った。 「娘を助けてくれた暁には、お前の欲しいものを何でもくれてやる」 「それは僕の仲間にも言えることですか?」 アストはふと言った。 「分かった。お前の仲間にも同じ対価を渡そう」 ポケットの中でブレンディが愉快に笑った。 アストは不安もあったが国王の言うことを聞いた。 国王はふらふらと力なく部屋を出ていった。足取りが危なげで階段を滑り落ちそうだった。アストは部屋を見詰める。必要最低限の生活用具だけが置かれている。窓が全開に開いていた。風が窓から入り込んでくる。
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