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「悪魔に先手を取られるとはね」
ブレンディが毒づいた。
「見張られていたということなのか?」
アストは考えてみたが答えには辿り着けそうもなかった。
アスト自身が悪魔の生態性を理解していなかったのである。
「そこまでこの国のお姫様に執着しているとなると。もっと根深い真相があるのかも知れないね」
ポケットの中でブレンディは喋った。
アストは気が気ではなかった。
階段を足早に駆け降りて、裏門の兵士を言いくるめてメルラがいる具現屋へと走った。
走りに走って戻った先ではティアラが椅子に座ってうとうとしていた。
勢いよく開いた扉の音にティアラが目を覚ます。
「どうなさったのです」
寝ぼけ眼で疑問符を浮かべるティアラにアストはクリスタル城でのことを話して聞かせた。
信じられないとばかりにティアラの顔から血の気が引いた。
最早、余裕はない。
アストもまた気が気ではなかった。
落ち着かないままで両手を握り合わせる。
「なんてことでしょう。姫様が拐われてしまった」
ティアラがおろおろと呟いた。
「悪魔を封じ込める額縁ができたなら、直ぐにでも西国へ出発しよう」
ブレンディだけが前向きにことを進めて行く。
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