1章 銀の鍵

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「もちろんだ。僕は姫様を救うと誓ったんだ。悪魔の城へ行くに決まっている」 アストは顔を上げた。 「私も悪魔を殺しに行きます」 ティアラが真顔で言い切った。 「それじゃあ、話は決まったね。後は額縁を待つだけだ」 ブレンディが言うとティアラが続けた。 「旅の準備があります。早急に揃えるものを揃えなければ」 「旅にはなれている。今度は私がここで待って居るとしよう。準備ができたら戻っておいで」 ブレンディは空いていた待ち合いの椅子に座った。 アストから見ればブレンディという男は得たいの知れない雰囲気を持った男という印象であった。 ブレンディに額縁を任せてアストとティアラのふたりは旅の準備をするために夜霧の中をティアラの家に向けて歩いた。 アストは城に変える理由がなかったのだ。持ち物と言えば炉銀(ろぎん)だけだろう。城に向かったところで持ち合わせはない。貯蓄もあるにはあるが微々たるものだった。 ルメラの具現屋からティアラの家までは三十分程度であった。 ティアラの家は中流階級の物件だ。それでも中庭は広く、家の構えも立派なものであった。 ティアラにつれられて部屋に入るとティアラが鞄を引きずり出し、必要な道具を入れ始めた。 「ティアラさんはサバイバルが趣味なのか」 詰め込まれていく荷物は本当に必要なものだけだった。
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