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「いや、物覚えは悪いよ」
アストは苦笑う。
「そうなのかい?」
「魔力があるのに魔術が使えないことがいい例だ」
「魔術、そうか、アストは魔術が使えないのか」
「まあね。色々事情があるんだよ」
「親に教えられずにここまで来てしまったということでいいのかな?」
「そう言うこと」
「大変だね。君も」
星空が綺麗な夜であった。野宿するに適した気温である。川のせせらぎがそばで聴こえる。風が焚き火の炎を揺らす。
「魔術は少しずつティアラに教わっているよ」
「私が仮眠している間だね」
「だけどどうにもうまくいかない。こんなんで悪魔とどう戦えばいいのか、焦ってる」
「西国までは後は三日はかかる。焦らずにひとつの魔術を完璧に覚えることだ」
「それができれば苦労はしないんだ」
「魔術のどこが難しいんだい?」
「内部にある魔力を現実に引き出すイメージをすることがいまいち掴めない」
「基礎じゃないか」
「こんなことで悪魔を倒せるのかな、僕は」
アストは項垂れた。
「時間が経てばお姫様の命も危うくなっていく。旅は急いだ方がいい」
「わかってるよ。わかってるけども」
「練習だけでどうなるものでもない。そうだ。ひとつ魔術を教えよう」
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