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「練習だけでどうにもならないのに、魔術を教えるって?」
アストは笑ってしまった。
「練習しなくても炎くらい作り出せるさ」
ブレンディが立ち上がって焚き火の脇に出た。
「簡単な方法は両手の小指をくつけて。水を掬うように構える。やってみるといい」
アストは半信半疑で、ブレンディの言うように両手をくつけた。
「そうしたら、中心を見詰めて集中する。炎を、火を思い浮かべる」
「それが難しい」
「色、熱、大きさ。順に焚き火の火を掌に描いていく」
アストは赤を、焚き火と同じ熱を、炎の大きさをゆっくりと思い浮かべる。
アストは掌にはっきりとした熱を感じて、声をあげた。
「熱いっ」
様子を見守っていたブレンディが笑った。
「できたじゃないか」
「できた?」
「はじめは熱を感じる。それが一歩なんだ。次は水、次は風、次は土。そうやってやれることを増やしていく」
ブレンディの掌に火球が浮かんで消えた。
「基礎力を応用して、炎で動物を作り出す」
ブレンディが闇を人指し指で叩くと炎の猫が姿を見せた。
アストは炎の猫を見詰めてしまった。
「魔術は──他にどんなことができるんだ?」
アストの質問にブレンディは炎の猫を焚き火に飛び込ませた。
炎が一瞬だけ威力を増した。
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