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今まで女性に触ったことなどなかった。それが躊躇の原因だった。
ティアラの寝ぼけ眼にアストは飛び退くように離れる。
「見張りの交換の時間だよ」
「あら、もうそんな時間?」
ティアラが毛布を畳んで荷台をおりて焚き火に向かっていく。
アストにはそれだけのことが億劫だった。
それでもティアラは呼び掛けただけでは起きはしなかった。
ブレンディは朝に馬車馬の世話をしてくれている。夜は少し長めに眠らせてあげたい。と言い出したのはティアラの方だった。
ブレンディが荷台に乗って横になるのを確認したアストは、焚き火の近くに座った。
ティアラは地べたに布を敷いて座っている。
二人は焚き火を挟んで向き合った。
「今日は昨日のつづきをしましょう。どうですか。イメージを具現化できそうですか?」
「さっきもブレンディに教えられたよ」
水を掬うように両手を合わせるとアストは教えてもらった通りに石木を集中させた。
掌に熱を感じ始める。それでも気を抜かずに青紫色をした炎を産み出した。
しかし、数秒もしないうちに熱に負けて青紫色の炎を赤い炎に取り落とす。
「炎を周囲に浮かべるようにすることです」
ティアラが手を叩くだけで青紫色の炎が焚き火の周りに浮かび上がった。
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