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「氷か──やってみるよ」
アストは立ち上がり片手に氷をイメージし続けた。数分繰り返すうちに氷の大きさを調節できるまでになった。アストには上達していることが手に取るようにわかった。けれども攻撃対象に向けての魔術は使ったことがない。悪魔と接触する前には使いこなしたかった。
「実践してみますか?」
「実践っ」
「お顔がふあんそうでしたので」
「ティアラにはお見通しなのかな」
アストは笑ってしまった。
「だけど、どうするんだ?」
「炎を幾つか飛ばすので魔術で避けてください」
ティアラの提案は恐ろしく単純なものであった。
アストは承諾してティアラと向き合った。
ティアラが炎を飛ばし始める。
最初は速度も個数も少なかったがどんどんと増やしていく。
アストは氷だけで炎を交わし続けていたが集中が切れて炎に直撃して気を失った。
2悪魔の住む都
目が覚めたときは馬車馬の荷台の上だった。
太陽は空に登り、風は穏やかに流れていく。
服には焦げ目がついていた。
皮膚の火傷はブレンディが魔術で直してくれたようだった。
ぼんやりと揺れる荷台で青い空を眺める。
「おはようございます」
ティアラの声が頭の上で聞こえた。
「おはよう、あれから何時間経った?」
起き上がってアストは尋ねた。
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