2章 悪魔の住む都

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荷馬車が止まったのはその直後だった。 馬車の手綱を握っていたブレンディが荷台へとやって来る。 「悪魔の住む都が見えてきたけれど、簡単には入れそうにないね」 荷台へと上るなり疲れたようにブレンディは言って、指を指す。その方向に棘が張り巡らせた門がある。月明かりに照されて見える光景は不穏な空気を漂わせていた。ブレンディの言うとおり簡単には近寄れない雰囲気がある。 アストは胡座を掻いた。 「悪魔の容姿も名前も僕は知らない。このまま不用意に乗り込んでもいいのだろうか」 「怖じ気づきましたか?」 ティアラが嘆息した。 「そうじゃなくて、もっと何かいい方法がないかなと思ってさ」 「額縁に封印する作戦を練ろうというのか?」 ブレンディが顎を触っている。 「真っ正直に突っ込んでも不安というだけさ」 「だけどここまで誰にも会わなかった。情報を得ようにもどうしようもない」 雲行きが怪しくなって稲妻が走った。 「悪魔に気がつかれていると言うことは考えられないかな?」 雷鳴が強まっていく空にアストは疑惑を口にした。 ブレンディはと言うと顎に指先を当てたまま稲妻を見上げていた。 「だとすれば、堂々と殴り込めますわね」 決断を下したのはティアラだった。
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