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荷馬車が止まったのはその直後だった。
馬車の手綱を握っていたブレンディが荷台へとやって来る。
「悪魔の住む都が見えてきたけれど、簡単には入れそうにないね」
荷台へと上るなり疲れたようにブレンディは言って、指を指す。その方向に棘が張り巡らせた門がある。月明かりに照されて見える光景は不穏な空気を漂わせていた。ブレンディの言うとおり簡単には近寄れない雰囲気がある。
アストは胡座を掻いた。
「悪魔の容姿も名前も僕は知らない。このまま不用意に乗り込んでもいいのだろうか」
「怖じ気づきましたか?」
ティアラが嘆息した。
「そうじゃなくて、もっと何かいい方法がないかなと思ってさ」
「額縁に封印する作戦を練ろうというのか?」
ブレンディが顎を触っている。
「真っ正直に突っ込んでも不安というだけさ」
「だけどここまで誰にも会わなかった。情報を得ようにもどうしようもない」
雲行きが怪しくなって稲妻が走った。
「悪魔に気がつかれていると言うことは考えられないかな?」
雷鳴が強まっていく空にアストは疑惑を口にした。
ブレンディはと言うと顎に指先を当てたまま稲妻を見上げていた。
「だとすれば、堂々と殴り込めますわね」
決断を下したのはティアラだった。
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