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「アスト」
ブレンディの声が直ぐ近くに聴こえて、はっとする。
アストは床に仰向けに倒れていた。幸いにも傷は浅く、動ける程度の打撃であった。
背中を酷く打ち付けたせいか息苦しい。
ゆっくりと起き上がったアストのところへティアラとブレンディが駆けてきた。
「この屋敷全体が魔術で弄られてる。簡単には悪魔のところへは行けなさそうだ」
ブレンディが辺りを見渡した。
ティアラにも不安な影がよぎっている。
「上には登らせないつもりなのか、随分凝った魔術を使っている」
「解除はできないのか?」
アストは立ち上がる。
「できたらとっくにやってるよ」
ブレンディが険しい表情で言う。
魔術を覚えたばかりのアストには太刀打ちできそうもなかった。目まぐるしく脳内を駆け巡るのは国立図書館で読んだ魔術の解除方法だけだった。
ブレンディが声音を潜めた。
「一応、仲間に連絡はしているんだ。みんなで悪魔の住む都へ向かっているはずなのだけれど。いかんせん、国中から集まるのでいつ辿り着くかは私にも分からない。救援がくるまで撤退も視野に入れようか?」
「そういって、ティアラが聞くとは思えない」
アストは、ティアラがいる方をちらりとみる。そのティアラが居なかった。
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