Chapter .1

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  青年の母親は、   閉ざされた部屋の前で   ため息をついた。   そして、  「 ………いいわ、    ここで話すから……    ちゃんと聞いて………。    さっき… 言い掛けた事    なんだけど…… 」   母親は “ドア越し” の   青年に向かって話し始めた。   その時、流美は   部屋のドアをすり抜け、   “青年の様子” を伺った。   青年は、微動だにせず、   机にヒジを突いて   頭を抱え込んでいた。   青年の母親は、   淡々と続けた。  「 ……真奈美ちゃんねぇ…、    本当は… お父さんの仕事の    都合で………、    ジョージア州の……    “アトランタ” …に    行くはずだったのよ………。    だけど……、    あなたが… “事故” に遭って    しまったから……。    それで… それでっ………    真奈美ちゃん……、    あの “事故” が起きてしまった    のは………    『自分の責任』 …だっ…て。    真奈美ちゃんねぇ……、    今までずっと…    “その事” ばかり気にしてた……。    あの子……    優しい子…だから………。    それで… 真奈美ちゃん……、    あなたの事が……    “心配” で………、    アトランタへ行く事を…    頑なに拒んだのよ………。    あなたが “失ったもの” は…    大きいかもしれない………、    だけどっ…!    真奈美ちゃんだって……    あなたと同じくらいっ、    “大きなもの” を…    失ったのよっ…!    ………今なら… まだ間に合うわ、    颯太……    ちゃんと… 真奈美ちゃんに    謝って来なさいっ!!    あの子なら… きっと……    分かってくれるはずよっ!    あ、アンタ…食欲… あるの?    ご飯…、    準備出来たら呼ぶからねっ。    ちゃんと食べなさいよっ… 」   すると、母親は   後ろ髪を引かれるような   思いのまま、   キッチンへと戻って行った。        
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