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人には命をかけてでも守りたい『聖域』というものがある。
ここはアメリカのニューヨークタイムズスクエア。
高いビルが林立し、賑やかで色とりどりの企業の広告が目立つ。車の往来はなく辺はガランとしていた。透けるように空は真っ青だった。
そこになにも予告なしに動物の着ぐるみ集団が現れる。
手にはカラフルな風船を持ち、陽気な音楽と共にパレードが始まった。
彼らの周りに何事かと人垣ができていく。
陽気に歩く猫の仕草に人々は目を白黒させ、でっぷりした体のヤギが間抜けに踊るのを笑った。目の前を飛び跳ねるウサギの仕草に、同じように子供達が跳ねる。
子ねずみたちの持っている風船をそれぞれ子供たちはねだる。そうしていつまでも楽しく華やかにパレードは続いた。
金髪の少女の前にウサギが躍り出て風船を渡す。彼女は目を輝かせてそれを受け取った。
ウサギは続けて後ろ手に陽気なダンスを踊り出した。みんなは笑う。しかしキラリと光る何かが少女の頭を掠めると、ぬめりとした赤い液体が一瞬で少女の髪の毛と顔、ピンクのシフォンワンピースに飛び散った。
風船の代わりにウサギの白い手には鎌が握られていた。その切っ先には鉄の匂いがする血が滴っている。自分の背丈より高い大人達の首がなくなっていて、少女は悲鳴を上げた。
パレードのあちこちで着ぐるみ達が陽気な笑い声を上げながら、鎌や斧で人間への殺戮を始める。
首がなくなった大人たちの背中に姿を隠しつつ、混乱と恐怖で真っ青になっている少女の腕を俺は引っ張った。
そして防御柵のある安全地帯になんとか逃げ延びる事ができた。
しかしそこは資源がない。数キロ先の仲間のいるところへ物資を取りに行かなくてはならない。
奴らは姿が見えたら攻撃してくる。潜伏班に任命された俺は息を潜め気配を消して行き、災害用のリュックで物資を運ぶしかないのだ。
『マサオさん、水がここにはありません、助けてください』
助けた美少女に俺はお願い事をされる。美しい女性だ。名前を聞くと、キャロルと応えた。
「任せなさい、キャロル」
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