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れた男は浅い夢を見た。
小さな工場で働く夢だ。
部下に怯えることはない。
女が近づくことはない。
安全な水、酒、肉。
穏やかな安眠の時。
王たる自分が最も望んだ理想ではないか。
その理想の夢が覚めるか覚めないかのうちに男は部下である一兵卒に刺されて、永遠に眠りから覚める。
男は目が覚めた。
工場勤務の独身非正規労働者戻った
わけではなかった
男は無になった。
いや無ではなく無を構成する一要素。
なんだろう、 分かりやすくいえば宇宙の塵になったのだ。
しかし記憶はそのまま。
これはこの世界の元締め。
分かりやすくいえば宇宙の総てを統べる神によってその位置に置かれた。
これより男は元締めのきまぐれでも起きぬ限り未来永劫 無となって無を見続け感じ続ける
。
過去の記憶はそのままに。
寂しさが、懐かしさが男を襲う。
だが慰みは一切無い。
永遠の無 というブラウン管の黒の1ドットとなって永遠に嘆き続けるのだ。
自ら命を断ち 人を欺き、貪ることをかえりみなかった報いとばかりに。
「おう おう 俺が悪かった。良子、よしこや、お前お前だけが俺を歓迎して、むかえてくれたんだな、俺はそんなお前を見捨てていった
、すまぬ、 俺が悪かった 許してくれ、 よしこ」
すると元締めはそういうこともあったなと白い犬のことを思い出してやった。
良子は男が死んだあと、男を探して街をさ迷い、保健所にて滞りなく殺処分された。
それでそのままになっていたのでちょうどいいと男の1ドットのすぐ隣に1ドット白くつけてやった。
すると男はもうわけがわからないがなぜか心がぱっとあたたかくなったのである。
そしてことの次第を知った人の誰かが地球からこの様子を見て「王犬座」と名付けた。
男は役目を終えたのである。
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