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見渡す限りの澄み渡る青い空と、それに連なる真っ白な雲を、少年は一人……屋上から眺めていた。
「今日もいい天気だな~」
昼食を済ませた穏やかな昼休み。学校全体からも、生徒の大小さまざまな明るい声がこだまする。
キーンコーン…カーンコーン……
そして、あっという間にその心地よいひとときに、終わりを告げるチャイムが鳴り響くのを確認すると、少年は面倒くさそうに立ち上がった。
「さーってと……」
そのまま屋上を後にして教室に戻るのかと思いきや、出口とは逆の…フェンスの方へと少年は歩み寄る。そして一言、こう呟いた。
「そろそろ…死ぬか」
さっきまでの呆けた顔から一変して、暗く冷たい表情を見せると、そのまま無言で屋上の端まで何の躊躇もなく歩みを進めた。
そこは、落ちれば即死は免れないだろうというのが一目でわかる高さだった。米粒ほどの大きさの学生が体育の授業をしているのが見え、少年は不敵に笑った。
「案外、誰も気づかないもんだな…人一人が死のうとしてんのに。…まぁ、俺なんかが勝手に死んだところで、悲しむやつもいねーか……」
そう口にして覚悟を決めた少年は、その場で静かに目を閉じた。
(お前なんかいらないんだよ!! 話しかけないで… 何でこの世に生まれてきたの?)
今まで少年の身に起こった辛い過去が、ふいに頭の中で蘇った。
「つまらない……人生だった」
悲しげな瞳で最後にそう言い残すと、右足を上げて“死”への一歩を踏み出した。
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