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無表情な顔がこちらを見る。何故、戯さんがこんなところにいるのだろうか。
そもそも、様子が違いすぎる。本当にこの人は戯さんなのだろうか?
薄暗い社殿に、明りが灯る。俺も、目の前の戯さんらしき人も何もしていないのに……。さすがに少し驚いて、周りを見回してしまう。
「我と、由高以外、ここには誰もいない。」
そう、いつもと全く違う話し方で言われ、そちらを見る。
誰もいない?お社様の元へ自分は来たのではなかったのか?ということは……。
「あなたが、お社様……。」
金色の目を見て、尋ねる。尋ねるというより、もはや確認に近いその言葉に、お社様は緩く是と返す。
「まず、何から話せばよいか……。」
相変わらず無表情のままだが、視線を右へ左へずらしていることで、悩んでいることが感じ取れる。正直、俺も聞きたいことが山ほどあったが、自分も何から聞いたらいいか分からない。
それでもおずおずと尋ねる。
「お社様はその、戯さんなんですか?」
びくり、とお社様の動きが一瞬止まったが、気を取り直したように
「望月家で会っていた、戯は我のことだが……。ああ、瞳の色の事か?」
と言う。
目の色の問題だけではない気がしてしまうのは致し方が無い事だと思う。
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