本編

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正直に伝えるしかないと思った。 「勿論、瞳の色もですが、表情とか、しゃべり方とかあまりに雰囲気が違いすぎるので。」 でも、やっぱり、戯さんなんだ。まじまじと目の前の人物をみる。モノクロの世界がサラサラと解けて極彩色になるような感覚。いつも会う時のように顔に熱が集まるのが分かる。 「まずは、我について説明しようか。我は蟇(マ)と呼ばれる一族の者だ。蟇というのは、ガマガエルの神格化したものと考えれば、間違いではない。今はこうして、人型でいるが本来は蛙だ。こうして人型を取っていても、どうしても蟇の性質を受け継いでしまっている為、表情を作るのが苦手でな……。能力を封印している時であれば、笑い顔だけで有れば作れたのだが、今はどうにも難しい。済まぬ、怖がらせてしまったか?」 「いいえ、戯様が怖かったとかそういうことではなく、ただ、戸惑ってしまって。」 「そうか、なら良いのだが……。それから、戯という名は隠し名だ。真名である”時雨”(しぐれ)と呼んではくれぬか、伴侶殿?」 は、は、伴侶!?その言葉を聞いた瞬間、驚いた。生贄と呼ぶのが憚られるから、便宜上『嫁入り』と言っているのではないのか? 明らかにそういう扱いだと思ってここへ来たし、ただ生贄として静かに生きていくのだと思っていた。 けれど、それは違ったらしい。 恥ずかしさと歓喜がじわじわと足先から上がってくる。 「し、時雨様……。」 思わず名前を呼んでしまう。
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