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今日作った煮物と、お土産にと持たされた色々な料理を持って帰途につく。
玄関の扉をあけるとそこに金色の目が光っている。
「ただいま帰りました。明り位つけませんか?」
「我は夜目がきくから必要ない。」
「俺は何も見えないので、明りつけますよ?」
入口にあるスイッチを入れる。
電気は通っていないはずなのだが、何故かスイッチを入れると明りがつく。
おそらく時雨様が俺のために準備をしていてくれたのであろう。
そういう心遣いがひどく嬉しい。
「今日は煮物を練習してきました。」
風呂敷包みを持ち上げながら時雨様に言った。
「狼の所へ行っていたのか。」
「はい、お子さんたちも元気いっぱいで、もこもこのふわふわで可愛かったですよ。」
貰ってきたおかずを食卓に並べながら説明をする。
「今日はお帰り早かったんですね。」
嬉しくなってついそう口から出た。
「ああ。」
短く時雨様が答える。
時雨様は、俺の作った大して上手では無い煮物を残さず食べて下さった。
今日だけでは無い、いつもそうだ、彼はとても優しい。
食器を台所で洗い、お茶を盆に乗せ、時雨様を探す。
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