本編

4/20
431人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
* * * この村は、災害に巻き込まれることが少ないだろう? ほら、5年前、豪雨で隣の市で大騒ぎした時も、この村は何ともなかった。 山の麓にあって、川が村の中心を横断している。そういう場所にあっても、この村で災害等が起きることは極端に少ないか、起きたとしても被害は最小限だ。 勿論、植林をして山を守っているというのもある。あるんだが、そもそも川岸の脆弱な土地だ。本来ならあり得ない事だ。 お社様が守ってくださっているんだ。ほら、山の中腹にあるだろう。そう、あれだ。 この土地は何百年か前からお社様に守られている。非現実的と思うかも知れんがそれが事実だ。 当然、守ってくださっているから、村ではお社様をそれはそれは大切にしている。それは由高お前も知っている通りだ。 だが、お社様の力には限りがあり、代替わりをするらしい。100年に1度なんだが、新しいお社様、がこの地に来られる。新しいお社様が来られると、人間から嫁を一人差し出す決まりになっている。この村の外で住んだことのない我々の一族、十六夜家の未婚の者を選ぶことになっている。 そう言って父は俺と兄を見た。 その表情があまりにも真剣で、それが本当の事だと分かった。 それに、その100年に一度が多分今年だという事も。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!