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翌日早朝、俺はお社に向かった。そこで、父の言っていたことに嘘は一切ないことを悟る。
何だこれは、半分透けた人より大きい蛇がうじゃうじゃとお社にまとわりついて、まるで締めあげるようにしている。これが良くないものだということが本能的な部分で分かる。絶望的な恐れで声も出せず踵を返し、息を切らせながら家に帰る。
何だあれは……。一体なんなんだ。
俺には霊感みたいなものはまるで無かったし、今まで不思議な経験なんてしたことは無い。
それで、初めて見てしまった怪異があれで、意味不明なのに、あれがまずいことだけは分かってしまう。
よくわからない状況ではあるが、あれをこれ以上のさばらせてはいけないことだけは分かる。そしてこのまま放置しておけばあれが村中に浸食していくことも。だってあれはお社から出たがっているように見えた。
そんな恐ろしい考えがなぜか間違っていないという確信が俺の中にあった。
ああ、昨日沙良さんが泣いていたのはこういうことか、きっと兄のことだ、高校生の俺を行かせるわけにはいかないと、自分が志願したのだろう。あの兄が、「世界中で沙良さんが一番大切だ。」そう恥ずかしげもなく言い切る人の覚悟を感じた。
だからこそ、俺が行くべきではないか、そう思った。
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