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そのやり取りをした途端、私はふとある事を思い出し
「……ふふっ」
つい笑ってしまった。
「あ?何笑ってやがんだ、てめえ」
自分が笑われたと思ったのか眉を顰める彼。
そんな彼に私は笑いながら首を振る。
「あ、ごめんなさい。いえ……そう言えばこの間も似たようなやり取りしたなーって」
「そうだったか?」
「ええ」
式典の時、人目を恐れる私に彼が言った。
他人は全部カボチャだと思え、と。
あの時もそんな風に言われて気が楽になったっけ。
「ふふふっ」
ルーちゃんにとっては他人はカボチャなんですね。
目のあるカボチャ。
目のある……
……冷静に考えると怖っ!!
逆にそっちのほうが怖っ!!
パンプキンスープとか食べられなくなりそう……!
そう思うとなんか方向性がズレたせいか、自然と足が動く様になった。
「あー……まあ、気になんねえってんなら何でもいい。おら、サクッと行って終わらせてくんぞ」
「はーい」
ルーちゃんと軽く言葉を交わし、私は闘技場に上がる。
併設された階段を登ると、そこには先客がいた。
「あら、逃げずに来たのね。身の程知らずの落ちこぼれが」
黄金色のふわりとした髪を靡かせ、礼装ではなく可愛らしい薄ピンクのドレスローブと大振りなルビーのブローチを身に纏った小柄な少女が、エメラルドの大きな目に敵意を漲らせ、仁王立ちで声を掛けて来た。
フェリシエル・ド・ローザンヌ。
ローザンヌ家の次期当主にして稀代の天才少女。
惑星魔術の使い手。
私がいなければ文句なしに主席として紹介されていたであろう彼女は嫌悪を隠そうともしない。
「本来ならゴミ屑以下の貴女に払う敬意など持ち合わせていないのですけれど、この私を相手に逃げずに来た事だけは評価して差し上げますわ」
「あ、はい、それはご丁寧にどうも。ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げると、彼女は少し釣り目がちの大きな丸い瞳を見開き、そして怒鳴った。
「貴女……馬鹿にされてるって自覚あります!?それとも私を馬鹿していますのっ!?」
「え」
思わずきょとん。そして
「あ、え、あの……そうなんですか?なんか、そのすみません。人から褒められたのって、この4年くらい一切なかったものですから。気分を害されたのなら、すみませんでした」
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