第46話「始まる前から大打撃」

3/8
5590人が本棚に入れています
本棚に追加
/1057ページ
なんと、気を遣わせてしまいました。 戦う前から申し訳ない。 謙虚に頭をさげると、彼女は顔を紅潮させて声を張り上げた。 「こ、の……!私の事を馬鹿にしてますわね!!してますわよねっ!?いくらあの方の血縁だからって……ものには限度というものがありますわっ!!!」 「ひぇっ」 キーンと耳が鳴るほどの甲高い声に肩を竦める。 ああ危ない。 これ、もう少し距離が近かったら耳が馬鹿になるところでした。 あれだけの声量で話せたら遠くからでも聞こえるんだろうなー。近くだと爆音すぎて頭痛がしそうだけれど。 私、結構声小さくて聞き返される事もあるし。 少し声を張る練習しようかな。 一方でルーちゃんが耳を抑えて顔を顰めている。 「うわ!だ、大丈夫ですか!?ルーちゃん!!」 「……うるせえ。なんだ、今のは?まだ試合開始してねえのに先制しやがったぞ、あの小娘」 そっか、ルーちゃん耳も良いからあの声にダメージ受けたんだ。 「あ、いえ、あれば魔術ではないのでノーカンです」 「ふざっけんな!凶器だろ、ありゃ!反則とれ!……あー、耳痛え」 「大丈夫ですか?」 「ん」 本当に心底辛そうなので可哀想になってしまい、ルーちゃんの頭をナデナデしてあげる。すると少し落ち着いたのか、彼は気持ち良さそうに軽く目を閉じた。 「痛いの痛いの飛んでけー」 「……なんの呪文だそりゃ。あー、けど確かに効くな。やるじゃねえか」 「えへへ、お役に立てたなら良かったです!」 普段辛口の彼に褒められてご満悦になっていると、先程よりも大音量でフェリシエル嬢が叫んだ。 「貴女たち!何をしに来たんですの!?お遊びなら他所でおやりなさいっ!!というか、この私を無視するだなんてどういうおつもり!!?許しませんことよっ!!!?」 余りの爆音に今度は私も耳を塞ぐ。 うあ、すごいこれ……! 「拡声魔術なんて使わなくても……この距離なら普通に聞こえーー」 「ーーこれは地声です!!!」 ……そうですか。 「ギャンギャンギャンギャンうるせえな。犬かてめえは」 「なんですって!!?」 サッ(耳栓ルーちゃん) あ、ルーちゃん今度は聞く前に耳塞いでる。 素早い。 私は失敗。 痛い。
/1057ページ

最初のコメントを投稿しよう!