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なんと、気を遣わせてしまいました。
戦う前から申し訳ない。
謙虚に頭をさげると、彼女は顔を紅潮させて声を張り上げた。
「こ、の……!私の事を馬鹿にしてますわね!!してますわよねっ!?いくらあの方の血縁だからって……ものには限度というものがありますわっ!!!」
「ひぇっ」
キーンと耳が鳴るほどの甲高い声に肩を竦める。
ああ危ない。
これ、もう少し距離が近かったら耳が馬鹿になるところでした。
あれだけの声量で話せたら遠くからでも聞こえるんだろうなー。近くだと爆音すぎて頭痛がしそうだけれど。
私、結構声小さくて聞き返される事もあるし。
少し声を張る練習しようかな。
一方でルーちゃんが耳を抑えて顔を顰めている。
「うわ!だ、大丈夫ですか!?ルーちゃん!!」
「……うるせえ。なんだ、今のは?まだ試合開始してねえのに先制しやがったぞ、あの小娘」
そっか、ルーちゃん耳も良いからあの声にダメージ受けたんだ。
「あ、いえ、あれば魔術ではないのでノーカンです」
「ふざっけんな!凶器だろ、ありゃ!反則とれ!……あー、耳痛え」
「大丈夫ですか?」
「ん」
本当に心底辛そうなので可哀想になってしまい、ルーちゃんの頭をナデナデしてあげる。すると少し落ち着いたのか、彼は気持ち良さそうに軽く目を閉じた。
「痛いの痛いの飛んでけー」
「……なんの呪文だそりゃ。あー、けど確かに効くな。やるじゃねえか」
「えへへ、お役に立てたなら良かったです!」
普段辛口の彼に褒められてご満悦になっていると、先程よりも大音量でフェリシエル嬢が叫んだ。
「貴女たち!何をしに来たんですの!?お遊びなら他所でおやりなさいっ!!というか、この私を無視するだなんてどういうおつもり!!?許しませんことよっ!!!?」
余りの爆音に今度は私も耳を塞ぐ。
うあ、すごいこれ……!
「拡声魔術なんて使わなくても……この距離なら普通に聞こえーー」
「ーーこれは地声です!!!」
……そうですか。
「ギャンギャンギャンギャンうるせえな。犬かてめえは」
「なんですって!!?」
サッ(耳栓ルーちゃん)
あ、ルーちゃん今度は聞く前に耳塞いでる。
素早い。
私は失敗。
痛い。
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