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「同じ攻撃を二度三度くらうほど鈍くねえよ。馬鹿か」
「んなっ!!?」
「違いますよ、ルーちゃん。あれは地声だそうですから、攻撃じゃないです」
「認めるか!あんなくそやかましい公害音波が、地声な訳ねえだろ!見ろ、他の連中も耳塞いでんじゃねえか!」
と言って指差した先には、ちゃっかり耳栓をした審判と客席で耳を塞ぐ魔術師たち。
あ、やっぱり皆煩かったんですね。
良かった。
ホッとして胸をなで下ろすと、目の前でフェリシエル嬢がヒクヒクと口元を引き攣らせていた。
「あ、な、た、た、ち……っ!!!!」
あ、やばい。
これ大砲クラスがくるかも。
身構えようとした矢先。
観客席の隅に見た事のある人物が姿を現した為、私は思わずその人物の名前を口に出した。
「あ、ネイト」
「えっ!!!!?」
その瞬間、彼女は思い切り驚きに目を見開いたかと思うといそいそと風で乱れた髪を手ぐしで直している。
ネイトは私と目が合うと不快そうに顔を顰め、ふいっとそっぽを向いた。
……しょぼん。
そういえば、フェリシエル嬢はネイトとは同部署の先輩後輩同士だ。きっと後輩の応援に駆け付けたのだろう。
私には冷たくなっちゃったけど、後輩には優しいんだ。
うん、それはそれでいい。
皆に冷たい嫌な子になっちゃってたら、お姉ちゃん、悲しくて泣いちゃう所でした。
いや、今もう既に泣きそうですけどね。
「なんだあの小僧、来てやがったのか」
「もう、ルーちゃん!小僧じゃなくて、私の弟のネイドルフ。ネイトです!」
「知るか。礼儀を知らねえ餓鬼は嫌いなんでな。つーかあの白銀野郎はどこだ?挨拶がわりだ、一発ぶん殴る」
「いけません!」
言い合いをしていると、不意にコホン。と咳払いが聞こえた。
ん?
音のした方をみると、何故かきちんと居住いを正したフェリシエル嬢が澄ました顔で告げた。
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