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「ソルシアナ・ファウリア・ド・ベネトロッサ」
「は、はい?」
「本来ならばベネトロッサ様とお呼びするのが正式な貴族の作法ではありますが、ここは純粋な魔術の場。同期として、敬称は省かせて頂きますわ。ご了承下さいませ」
「は、はあ……」
な、なんでしょう。
なんかさっきと偉く雰囲気が違う様な気が……?
彼女はコホンコホンと咳払いをし、チラリと観客席を見た。
視線に気付いたネイトが良く通る声で声援を送る。
「フェリス、頑張って!」
その声を皮切りに、辺りに集まっている執行課からも声援があがる。
「頑張れー!ローザンヌさーん!!」
「ファイトー!」
「頑張ってー!フェリスちゃーん!!」
「あんまり叫ばなくてもいいですよー!聞こえてますからー!!」
……なんか最後のはややクレームっぽいけど、なんかやんややんやしてる。
ネイトがまた何かを言っていたが、軽い声掛け程度の声量だった為か、その声は他の声援に紛れて良く聞き取れなかった。
するとフェリシエル嬢は聞こえない程度に舌打ちをし
「あのボンクラ低脳愚民ども……!呼吸するだけでも貴重な大気を浪費すると言うのに、あろう事か、麗しのネイト様のお声まで遮るだなんて、万死に値しますわ……っ!後ですり身にして、こんがりローストしてあげますから、覚えてやっしゃい……っ!」
どす黒いオーラで吐き捨てた気がした。
……うん、見間違い。
聞き間違いですね、きっと。
フェリシエル嬢みたいに可愛らしいご令嬢が、あんな怖い声で怖い事言うはずないです。
疲れてるのかなー、私。
昨日ぐっすり休んだのに。
おかしーなぁ。
でも、あんな風に誰かに応援して貰えるだなんて羨ましい。
私にはそんな人いないしなぁ。
眩しく思って見ていると、不意に別の方向から拡声魔術による音声が飛んできた。
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