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『しゅにーん!!応援にきましたよーっ!!』
「こ、この声は……サミュエル導師!?」
たった一つの声援。
普通なら埋もれてしまいそうな声ではあるが、拡声魔術で拡大されたそれは、通り良くこちらに響いた。そして
『そーれ!ファイアー!!』
ヒュルルルルルッ
ドーン パーン パーン
パチパチパチ
導師の号令を受け、凄まじい轟音を響かせて、真昼の空に盛大な花火が上がった。
昼間の空では光など見えなくなりそうだが、魔術加工を施された蛍光色の光とパステルカラーの煙は青空一面に広がりそしてーーとんでもないメッセージを描き出した。
対広部の天使級アイドル系主任
魔術師ソラ、ここに降臨!!
目指せ☆全国制覇
ゴー☆キル☆ウィン☆
(デスは駄目デス!なんつって(≧ω≦`)テヘペロ)
「………」
私は絶句。
「……」
ルーちゃんも絶句。
「………」
フェリシエル嬢までも絶句。
「「「………」」」
てゆーか、会場自体が絶句。
しーーーーん……
先程までの声援が全て止み、見事なまでの静寂があたりに満ちる。
全員が微妙な沈黙を抱いた。
『やったー!うちの声援が一番みたいですね!応援は量ではなく質ですよ!質!!ってな訳でしゅにーん、頑張って下さいねー!!』
1人能天気に喜んでいる、うちの上司を除いて。
「な……」
なにしてくれちゃってんですか
アナタぁああぁっ!!?
余りのぶっ飛んだ声援に、思わず赤面して地面に丸くなり悶絶する。
ひどい。
これ、ひどい。
イジメです。
見ると先程まで蔑みの眼差しを向けていた 魔術師たちから、一様に生暖かい哀れみの視線が向けられた。
物言いたげな視線の数々。
分かってます。
だからお願い。口には出さないで。
「……ソラ」
「やめてルーちゃんお願い」
「……あー、なんつーかその……気にすんな。な?」
「無理です……」
「だよな。うん。悪い」
始まる前から唯一の味方である筈の上司から精神的な大打撃を受けド凹みする私を他所に、あの笑顔の悪魔ーーじゃなかった、我が上司、サミュエル・ロートレック導師は周りの空気そっちのけで
『あ!ルーセントさんも頑張って下さい!!ルーセントさんの花火もちゃーんと用意してありますからー!よし、では早速ーー』
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