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「~~~っ!!打ち上げたら、あの小娘より先に、まずは、てめえを、ぶっ殺すっ!!!」
大気を揺らすほどの咆哮をあげ、サミュエル導師を牽制するルーちゃん。
牙を剥き出しにして尻尾で闘技場のフィールドを叩くと、ドコンッと重たい音と共に石畳に覆われたその場所に小さなクレーターが出来た。
敵意剥き出しどころか、殺意垂れ流しです。
でも、うん……気持ちは分かる。
だってだって、ここ、塔の最上階ですよ?
そこからあんな目立つ色の花火を上げたりしたら、当然下からも見えますよね?
ーーつまり、ジューネベルクの街全域で。
ああ、駄目だ。
意識が遠のく。
頭痛い。
おうち帰りたい。
てゆーか、もう街の中歩けない。
うん……引き篭ろう。
これから一生、お外に出なければいいんです。
やったー、本、読み放題のアコガレ・ニート生活だー(白目)
『えー?……うーん、残念だなぁー、折角給料一月分と貯金の半分を崩して、試合中も消えないようにーって、空中源素固定発光体技術を用いた超最新鋭の花火を作ったんですけど……』
「「そこ、給料無駄遣いしないっ(すんなっ)!!」」
ルーちゃんと私のダブルツッコミ。
息ピッタリ。
思う事は同じだったか……良かった。
ぐったりしていると、目の前で呆気にとられていたフェリシエル嬢も憐憫の眼差しで
「……貴女の事は嫌いですけど、あの上司の存在については、多少同情致しますわ。ソルシアナ・ファウリア・ド・ベネトロッサ」
「うぅう……」
ああ、相手に情けを掛けられました。
なんかもう、開始前からボロボロです。
敵は身内にいたみたいです。
かなしみ。
「おいソラ、落ち込んでる場合じゃねえぞ」
「……はい?」
ルーちゃんがひそりと声を潜めて導師を視線で牽制しながら呟く。
「あの野郎の事だ。負けたらぜってー、あの悪趣味花火で盛大な励ましコメント打ち上げてくんぞ」
「……え゛!?」
「勝てばまあ、おめでとう程度で済むだろうが……」
「嘘、でしょ……?」
ガクガク震えながら問うと彼は苦い顔をして
「相手を誰だと思っていやがる。“あの”ロートレックだぞ?」
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