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「そんな……!」
負けたら励ましコメント?
あの花火で??
お空一杯に???
冗談は……
冗談は、よしこさんです!!
「……ルーちゃん」
ゆらりと立ち上がる。
足に力が戻った。
「なんだ」
「……勝ちましょう。是が非でも」
「おう」
負けた事を盛大に国内に宣伝された日には、それこそ塔の会報どころか、魔術師協会の協会誌にまで取り沙汰されるかもしれない。
一族だけでなく、国内全ての国民に後ろ指をさされ、私だけならともかく、ベネトロッサの名まで地に落ちる。
ベネトロッサの名を冠する魔導学院は落ちこぼれ魔導学院と名前を変え、役員を務める親類縁者は人目を避けて隠者の様な暮らしを余儀なくされ、果ては教え子たちも出身校をひた隠しにして就職しようとするだろう。
私1人の失敗が、国全土に知れ渡るだけなら私だけが引き篭ればいいだけの話だが、ベネトロッサの血を誇りにしている分家や傍流の皆様にまでご迷惑はかけられません。
私、ソルシアナ・ファウリア・ド・ベネトロッサ。
如何に落ちこぼれとはいえ一魔術師、いえ一人間として、無関係な一族の皆様の尊厳と、奉仕の精神まで失う訳にはいきません。
それだけはーーなんとしても阻止せねば!!
ベネトロッサの名に賭けて!!
落ちこぼれですけどね!!
いつになくやる気に満ちた私に、フェリシエル嬢が僅かに顔色を変えた。
「ふぅん?少しは真面目にやる気になったみたいですわね。結構。……審判!」
彼女が呼びかけると、それまで静観していた審判の魔術師が漸く両者の間に立ち、ゆっくりと手を掲げた。それに合わせて石畳の東西に太陽と月の模様が現れる。
魔法陣ーー決闘用や魔力の優劣実験などに使われる類の計測系魔術の一種だ。
あそこに入ってしまえば、戦いが終わるまで出られない……いや、正確には、出る事は可能だがその時点で勝負を降りたことになる。
つまり、敗北を意味する。
負けません。
絶対勝ちます。
ルーちゃんと一緒に。
震えそうになる足に力を入れ直し、私は真っ直ぐにフェリシエル嬢の目を見て戦う意思がある事を示した。
彼女も強い視線をぶつけてくる。
星骸の塔最上階。
そこで今正に、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
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