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ルーちゃんの言う通りだ。
召喚師の真価は従霊との絆と、その連携にある。
術式を構築して自ら戦うのではなく、従霊と協力してその力を解放し、立ち向かう。
そもそも、戦い方が違うのだ。
魔力の量では劣っていても、それが即不利に繋がる訳じゃない。
事実、召喚師のほとんどは他の魔術師たちよりも力が弱い。けれどそれを補って余りあるほど、私たちに呼ばれる従霊は強いのだ。
召喚師の一族が他の魔術師たちから畏敬の念を集めるのも従霊の驚異的な強さに由来する。
確かに、私はとても弱い。
でも彼は、ルーちゃんはとっても強いから。
だから信じる。
私を信じて前に立つ竜(ひと)がいてくれるなら、私は信じて、自分に出来る事をやるだけだ。
心に決めた。
何があっても、私は彼を信じると。
気合いを入れ直して気持ちを落ち着ける。
霊層を起動し、回路を開く。
私の回路はメインのみ。サブは閉じているだけで一応生きている事も分かったが、練習していないからぶっつけ本番になる。
下手を打てば焼き切れる可能性もなくはない。
でも決めた。
やるんだって。
覚悟を決めた私たちの間に立ち、戦いのルールが説明された。
「戦闘はダメージ加算計測方式で行います。両方陣は計測魔術と結界魔術の混成結界です。こちらに加えたダメージがより多い方が勝者となります」
淡々とした事務的な口調で審判は告げる。
「結界は専任導師による多層構築で、術者への安全は考慮されてはいますが一定量の蓄積ダメージを超えた場合、破損する場合もあります。その場合、結界式の残量が50%を割った時点で試合を一時中断し、続行か棄権かは術者当人の判断に委ねるものとします」
自己判断での棄権……
結界のダメージにも注意しないと。
「続行の場合、残量20%を切った時点で結界魔術師たちによる術式干渉の準備が行われますが、必ずしも安全を保障するものではありません」
つまり、間に合わなかったら直撃をくらうという事だ。
「両者自己責任で自らの安全に留意し、判断を行って下さい。なお、魔術師自らが故意に魔法陣から出た場合、その時点で棄権とみなし、戦闘は終了となります。……何か質問は?」
尋ねるとフェリシエル嬢が小さく首を傾げて微笑んだ。
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