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「もし審判側で中断の判断が遅れた時はどういたしますの?私の魔術は詠唱途中でもかなりの威力がありますわよ?それに、詠唱途中は不安定で確定出力も出来ません。もし“誤って”ぶつけてしまったとしたら……大惨事になるのでは?」
尤もな疑問だ。
だけど……なんだか違和感がある。
背筋が寒い。
「その場合、そちらに非はありません。相手選手が負傷した場合も考慮して治癒魔術師も待機しております。万が一にも死亡する事だけはないでしょう」
「……そう。それを聞いて安心致しましたわ」
クスリとフェリシエル嬢が笑う。
ぞくりと今度は分かるほど明確に悪寒が走った。
いや、彼女は確認をしただけだ。
もし止められなかったらどうなるのかを。
術式構築系の魔術師は彼女の言う通り、完成するまでは非常に不安定で制御が効き辛い。
わかり易く言えば、乗馬に用いられる馬の様なものだ。
馬力のある駿馬を用意したとしても、鞍や手綱がなければそれは勝手に走り出し、場合によっては人に怪我をさせる場合もある。
術式構築系魔術も同じ。まず馬にあたる基礎エネルギーを構築し、そこに鞍や手綱の役割を持つ制御系を付ける事で術者の意のままに発動する。
それを途中で中断した場合、術者にも制御できない事がある。
通常の魔術なら詠唱をやめて大気に放つ事で霧散させる方法もとれるが、彼女の扱う惑星魔術は超高火力の攻撃系魔術だ。
無闇に放てば辺りにどんな被害が出るか分からない。
だから、確認しただけだ。
周囲の安全性を。
「ねえ」
「……なんでしょう」
声を掛けられそちらを見ると、彼女は花のように優雅に微笑んだ。
「もし無理だと思ったら、早目に降参して下さるかしら。私、夢中になると“つい”やり過ぎてしまいますの。今日はネイト様もいらっしゃっている事だし……はしたない姿は、お見せ出来ませんでしょ?」
「……考慮しておきます」
「ええ!是非そうしてくださいな!」
「ご忠告どうも」
「どういたしまして!だって貴女はネイト様の“お姉様”で、“あの”ベネトロッサのご令嬢ですもの。まかり間違っても“傷物”には出来ませんものねえ?」
どこか楽しそうに語る彼女を見て、ルーちゃんが小さく零した。
「おいソラ、油断すんなよ」
「……ルーちゃん?」
「あの小娘、てめえを殺す気で来てやがる」
「!」
息を呑む。
そんな……あれは導師の冗談だと思っていたのに。
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